不眠(心腎不交) 随伴症状:脚のだるさ
菊池さん 男性50歳回数16回期間91日間
夜中に何度も目が覚める。就寝時に膝から下にだるさを感じている。これまでにも寝つきが悪いことはあったが、一旦眠りに入ってしまえば途中で起きることはなかった。日中眠くなることが度々起こる様になる。自覚的に思い当たることは、最近仕事が以前よりも少し忙しくなったといったこと以外にこれといったものはなく、枕を変えたりもしたが睡眠状態は変わらず。よく眠れるようになりたいと来院。舌の先が紅く、口が渇きやすい。
- 上田
- 夜中に目が覚めるんですね
- 菊池さん
- はい
- 上田
- ということは眠りも浅いですか?
- 菊池さん
- ええ
- 上田
- トイレで目が覚めるということですか?
- 菊池さん
- いいえ、起きたついでにトイレに行きますが
- 上田
- 日中に眠くなることは?
- 菊池さん
- あります
- 上田
- それは困りますね
- 菊池さん
- はい
- 上田
- 思い当たることはありますか?
- 菊池さん
- とくにありません
- 上田
- ストレスは?
- 菊池さん
- ありますけど、以前と比べてひどくなったわけでもありません
- 上田
- 脚のだるさ、口が渇くといった症状があるんですね
- 菊池さん
- はい
- 上田
- 症状の原因が一つとは限りません。体質的なこと、年齢的なこと、いろいろなことが関わっています
- 菊池さん
- うーん
- 上田
- 不眠症には、西洋医学的にみれば、入眠困難、熟眠障害、途中覚醒、早朝覚醒などがあります。東洋医学的には主に実証と虚証があり、眠りを主っている臓腑は心です。菊池さんは腎の力が衰えたことが心に及んで、不眠症になった可能性が高いですね。これを心腎不交による不眠といいます
- 菊池さん
- ?
- 上田
- 心とは現代医学的にいえば大脳の働きに近いもので、腎は腎臓と同じではなく、生命力の源となるものです。腎が弱ると老化現象が現れます
- 菊池さん
- 老化ですか?
- 上田
- はい。腎には腎陽と腎陰があって、腎は生命の熱源、腎陰は生命の水源で
す。ですから腎が弱くなると、体が冷えつつも、口が渇くといったことが起きます
- 菊池さん
- ああ、口が乾きます
- 上田
- 菊池さんの治療は、心と腎をしっかりと相交させることがメインとなります
1回目
鍼灸治療後の夜はぐっすり眠れる
2~ 8回目
翌日からは元の睡眠状態に戻る。
9~12回目
寝つきが良くなる。夜中に起きる回数が減る。週に1~2回来院。
13~16回目
一晩に起きる回数は多くて1回。朝まで1回も起きない日もある。
睡眠の途中で目が覚めるといった以外にも、膝から下のだるさ、口の渇き、といった症状があるこの不眠症は心腎不交によるものです。心は精神的なものを担い、腎は老化と深く関わっています。白髪になる、耳が遠くなる、腰が曲がる、口が渇くなどの老化現象は程度の差はあっても誰にも起きるもので、トイレが近い、眠りが浅いとなどのことも同様です。しかしこれが病的になると治療の対象になります。仕事が忙しくなったとことで心火が亢進、また年齢的に腎陰が不足したため、心火を降ろすことが出来ず眠りが浅くなったと考えられます。治療は、腎陰を補い、心火を降ろし心腎の交痛を図ります。不眠症の7割は心腎不交によるものといわれています。菊池さんは、なるべく仕事量を増やさないようにして、早く帰宅できる日は早く帰宅するように心掛けたそうです。また休日も何となくダラダラと過ごすことが多かったそうですが、睡眠不足が解消されてきた時点で、外出の機会を増やすなど、できる範囲で動くようにしたことも功を奏したと思われます。