中医学でとらえる妊娠
上田
馬込沢うえだ鍼灸院院長
鍼灸でみんなを幸せにしたいと
日々精進
roo
健康に興味のあるネコ
出身地:千葉
好きな食べ物:肉
roo
腎精が不足していると妊娠しにくいんですよね
上田
確かに腎精の不足(腎虚)は妊娠に至らない場合が多い。なかなか妊娠しないということが、その人の体質の中に腎虚的なものがあることを物語っているよ
roo
不妊の原因は腎精の不足だけじゃないんですか?
上田
腎精不足(腎虚)以外の証もあるよ。証とは体質や状態のこと。体質を見極めて、その人に合った処方をするのが大切だね
roo
といいますと?
上田
例えば、腎精が不足することで気虚や血虚の症状も現れやすくなるよ。そんな兆候が見られたら補腎だけでなく、補気や養血も必要だね
roo
証が違えば選穴が違ってくるということですね
上田
選穴だけでなく、気や血を補い養うための生活上の意識することも多少違ってくる
roo
といいますと?
上田
体調をよくしたり病気を治そうというとき、基本的には、ストレスをためずに、適度に運動して、しっかりと栄養と睡眠をとるということが大切。これは不妊においても同じだけど、気や血を生成するためには脾の働きが重要だね。それとストレスは腎と関係の深い肝気を消耗してしまうよ
roo
大切なのは腎だけじゃないということですか?
上田
そういうこと。胃の調子がよくない人は胃を治すこと。便秘や下痢の改善も必要だね。だからセルフ灸をしている人は太谿(腎経)や復溜(腎経)だけでなく、足三里(胃経)や三陰交(脾経)といったツボも使った方がいいね
roo
にゃるほど
上田
中医学に「一源三岐説」というのがあるんだけど、一源とは胞宮(子宮)のことで、三岐とは、そこから三本の岐(えだ)がのびているという意味
roo
三本の岐とは?
上田
任脈、督脈、衝脈の三経。この経絡の流れが悪くなると子宮がパワー不足になって妊娠しにくい、つまり不妊となる
roo
じゃあ、この三本の経絡を元気にするといいんですね
上田
そうだね。経験上不妊に効くツボとして知られている子宮穴や気戸穴も効果的だけど、任脈、督脈、衝脈は優先して考えるよ。腎が虚しても、脾が虚しても、任、督、衝の経絡は元気がなくなる。でも、腎経もしくは脾経のツボでは、この三経を直接刺激することはできないんだ
roo
ふーん、そうなんですね
上田
関元や命門が不妊治療の常用穴ともされているのは、そういう意味合いからだね
roo
関元は任脈上に、命門は督脈上にあるツボですもんね
上田
そうだね。それから陰交穴も大事だね。任脈にあって、衝脈と交会(交わる)しているツボだね
roo
腎、脾、肝、気、血、任脈、督脈、衝脈が大事ということですね。他にもありますか?
上田
包寒による不妊というのがあるよ
roo
胞寒?
上田
胞は胞宮(子宮)のこと、胞寒とは子宮が冷えてしまうこと
roo
お腹を冷やしたらいけないんですね
上田
胞宮は赤ちゃんが過ごすところだからね。足や腰の冷えにも注意しないといけないよ
roo
胞寒と腎陽虚は違うんですか?
上田
腎陽虚は虚証、胞寒は実証だよ。腎陽虚は自ら熱を生み出せないもの、実証の胞寒はからだを冷やす直接的な原因があるものだ。腎陽虚だから胞宮が寒を受けやすいということもあるね
roo
ああ、そうか
上田
内寒でも、外寒でも、体を冷やすものは全てよくないよ。とくに月経期間中は胞宮は開いている。この時期に性行為を行うと寒邪を受けやすくなってしまうんだ
roo
とにかく冷やしたらだめですね。それと生理中はとくに体を大事に、ですね
上田
ただ冷やさないだけでなく、積極的に温めたほうがいいね。それから自らの力で熱を産めるように筋トレなどの運動もしたいね。無理は禁物だよ
roo
他に妊娠を妨げるものはありますか?
上田
痰湿や瘀血なども不妊の一因となるよ。痰湿は体内の余分な水分、瘀血は血が滞ったもの
roo
どうすればいいですか?
上田
水も血も気の力によって巡るものだから、まずは気の巡りをよくすること。自分でできることは、適度な運動と、しっかりした睡眠、栄養バランスの取れた食事、ストレスをためずに体を冷やさないこと、太陽の光を浴びること
roo
結局はそこなんですね
上田
治療する側としては、痰湿がみられる人には先述のツボにプラスして豊隆や場合によって次髎、瘀血のみられる人には血海を加えるなど、用いるツボが替わってくるけど、ツボ治療の効果を得るためには患者さん自身の養生が大切だよ
roo
養生が大切なんですね
上田
とってもね
妊娠に関わる臓腑が先天の精をつかさどる腎です。
腎が弱くなっている状態を腎虚といい、不妊治療において腎を補うことはとても大切です。
しかし体調不良の原因は人によって同じではありません。
後天の源である脾が弱いために先天を補えなかったり、
ストレスによって気や血を消耗しているのであれば、そういった面からの治療も必要です。
なにはともあれ患者さんの養生があってこそ実を結ぶ、すなわち妊娠そして出産に至ります。