五行論
2021/06/25
上田
馬込沢うえだ鍼灸院院長
鍼灸でみんなを幸せにしたいと
日々精進
roo
健康に興味のあるネコ
出身地:千葉
好きな食べ物:肉
roo
五行論ってなんですか?
上田
五行論というのは、「自然界で起きる事象は、自然界に存在する五つの代表的な物質がそれぞれ関り合って起きている」というもので、中医学のベースにある考え方だよ
roo
?
上田
自然界にある五つのものとは、木、火、土、金、水のこと
roo
はい
上田
木が燃えて火が生まれる
roo
木が燃えて火が生まれる
上田
火が燃えたあとの灰が土になる。もしくは土を肥やす
roo
土に灰を混ぜると、植物もよく育つそうですね
上田
土の中から金が取れる
roo
土の中から金が取れる
上田
金属に水滴がつく
roo
金属に水滴がつく
上田
水によって木が育つ
roo
水によって木が育つ
上田
火は燃えるための材料がなければ生まれないし、木は水がなければ育たないでしょ
roo
にゃい
上田
このように、生む関係のことを相生もしくは母子関係というよ
roo
「火の母は木で、木の子は火」ということですね。火は木から生まれる
上田
そういうこと。「木生火」だね
roo
木生火
上田
相克の関係もあるよ。克は克服、征服、抑えるという意味だね。木でできた鋤(すき)や鍬(くわ)によって土が耕されるでしょ。これは木克土。土によってつくられた壁や塀や土嚢によって水がせき止められる。これは土克水だね
roo
木克土、土克水
上田
それから水によって火が消される
roo
水克火ですね
上田
火によって金が溶かされる
roo
火克金
上田
金属でできた斧で木が切り倒される
roo
金克木ですね
上田
このように五つの物質は、他者を生んだりその働きを促したりする「相生関係」と、相手の力を奪ったり制御したりする「相克関係」によって成り立っているんだ
roo
自然界の事象はすべてこれらの関係に代表されると
上田
そう。これら五つの物質(五行)の特性は他のものにも当てはまる
roo
といいますと
上田
例えば季節。五行論では季節は四つじゃなくて五つある。春、夏、長夏、秋、冬の五つ。これは太陰太陽歴に則っていて、長夏というのは、梅雨を含む立秋の前までくらい。長夏の前が夏で、大相撲の夏場所が行われるのは、いわゆる夏だね
roo
ふーん
上田
五臓なら、肝、心、脾、肺、腎の五つ
roo
五臓に染み渡る
上田
肝は、西洋医学の肝臓とまったく同じものではないよ
roo
肝と肝臓は違う?
上田
一部重なるところもあるけどね。中医学(東洋医学)でいうところの肝は木の性質を持っていて、ストレスを受け止める働きがあるんだ
roo
肝が木?
上田
そう。肝は木「春」、心は火「夏」、脾は土「長夏(梅雨)」、肺は金「秋」、腎は水「冬」。木は春に新芽を出すでしょ
roo
なるほど
上田
木は上へ上へと伸びるものだね。それを遮られるのが、木はとても嫌なんだ
roo
木を囲むと「困」になりますね
上田
そうすると、受け止め切れないストレスは他の臓へ向いてしまう
roo
例えば?
上田
例えば心にむけば「肝心火旺」となる。うまく眠れなくなったりするよ
roo
肝心火旺で不眠になる
上田
脾に向けば「肝脾不和」となって消化機能に異常が現れるよ
roo
脾というのは、西洋医学でいえば消化器に相当するんですか?
上田
そうだね。主に消化吸収機能と考えて問題ない。お米や野菜が大地から取れるように、脾は食べ物から得た栄養を体内に届ける働きをもつよ。食欲なども関係している
roo
だから脾は土なんですね
上田
ストレスで食欲がなくなることがあるでしょ。逆にストレスから食べ過ぎるということもある。どちらにしても正常じゃない。病名でいえば、肝脾不和は神経性胃炎や過敏性腸症候群などに該当するね
roo
そういうことか
上田
肝の気が肺に向けば「肝気肺犯」となって、咳が止まらなくなったりする。それからアトピー性皮膚炎がひどくなったりするよ。皮膚も皮膚呼吸をしているから、肺に含まれるんだ
roo
にゃるほど。喘息などもストレスが関係していると聞いたことがあります
上田
腎にむけば「肝腎陰虚」。陰虚とはからだのいろいろな潤いがなくなること。肝腎陰虚が進めば、生命力が低下してしまうよ
roo
嫌だな
上田
それぞれ五臓特有の病気はあるけれど、単独の臓や、一つの症状にだけ捉われていては、肝腎なことを見落とすかもしれない
roo
対症療法になりかねない
上田
場合によっては対症療法も大事だけどね。ところで肝の気を抑える臓は何かわかるかな?
roo
えーっと、金克木だから、肺です
上田
その通り。ゆっくりと深く、しっかりと呼吸をして、暴走している肝の気を抑えるんだね
roo
そうすれば他の臓も調子を取り戻す
上田
そういうこと
roo
呼吸は大事ですね
上田
いま挙げたのは五行論を応用した治療法の一つの例だけど、だいたいこんな感じ。わかったかな
roo
前後関係や全体を見ることが大事なんですね
上田
そういうことです
五行論は陰陽論とならんで、中医学の基本となる考え方です。
五行的に整理しようとするあまり、無理にその中に当てはめることには注意が必要ですが、
物事を全体的に広く捉えるという点において、また病気を治療するにあたって、
非常に有意義なものといえるでしょう。
中国の医学部のカリキュラムでは、中医師が解剖学や生理学や病理学を学ぶように、
西洋医師も五行論などの中医学を学びます。