東洋医学が現代西洋医学的病名にこだわらない理由

roo
「東洋医学的視点でとらえる」ってどういう意味ですか?それが大事って聞きましたけど

上田
東洋医学には東洋医学の病気のとらえ方があって、東洋医学的な治療をするためには、東洋医学的に患者さんをみて、その病状を東洋医学的にとらえるということだよ

roo
例えば?

上田
例えば、不眠という症状があるでしょう?

roo
はい

上田
一口に不眠といっても、眠れなくなるまでの過程は人によって同じではないんだ。だから不眠を治療しようとしたら睡眠薬を出すように、ここに鍼をうってお灸をすれば、それでいいということではないんだよ

roo
不眠に効くツボがあるわけではないということですか?

上田
不眠の特効穴と呼ばれツボはあることはある。例えば「失眠」がそうだね。しかし失眠だけでは不十分だ。その人の状態にあったツボと失眠とを組み合わせて治療していくんだね

roo
ふーん

上田
そのためには、全体をとらえるということが、どうしても必要になってくるよ

roo
なるほど

上田
不眠症の人の「眠れない」というのは一つの症状に違いないけれど、それだけではその人全体をみていることにならない

roo
そうですね

上田
全体像を把握するためには、もっと多角的にみる必要があって、例えば舌診や脈診などもそうだね。患者さんから話を聞けば「眠れない」ということ以外にも、いろいろとあるはずだよ

roo
いろいろと問診をして、いろいろ舌もみて、脈もみる。だから時間がかかるんですね。なんか大変そうですね

上田
とくに初回は時間がかかってしまうけど、治療は鍼と灸をするだけだから、シンプルといえばシンプルだよ

roo
鍼灸師は手術ができるわけでも、薬を処方できるわけでもない

上田
そういうこと。それに東洋医学の治療は、全体をみて、その人の体がいい方向に向かっていくようにすることだから、現代医学的病名にはあまりこだわらないよ。もちろん参考にはするけど

roo
不眠症、腰痛、頭痛、アトピー性皮膚炎、過敏性腸症候群、うつ病、本当にいろいろな病名があります。一人で全部ということもありますね

上田
そうだね。一つの病気ごとに薬を出していたら、人によっては凄い量になってしまうね

roo
なんかこわいですね

上田
繰り返しになるけど、東洋医学的な治療をするときは、東洋医学的にその「人」をみて治療をしていくんだ

roo
だから、西洋現代医学的病名がなんであっても治療ができるというわけですね

上田
そういうことです
現代西洋医学的治療は「病気」に対して行われます。
例えば、不眠症には「睡眠薬」、うつ病には「抗うつ薬」といった具合です。
一方、東洋医学の治療の対症は「証」です。
その人が腎虚であれば「補腎」、肝気鬱滞であれば「疏肝理気」という治療が施されます。
腎虚には腎虚による不眠、めまい、耳鳴りなど、
肝気鬱滞には肝気鬱滞による不眠、イライラ、便秘や下痢という起こりやすい症状があって、
それぞれが改善されれば、その証による症状がすべて消失してしまう可能性があるということです。
これを「異病(症)同治」といって、病や症状が違っても「証」に働きかけることで、
その症状すべてに働きかけることになります。
また同じ病名(症状)であっても証が違えば、使用するツボが同じではありません。
これを「同病(症)異治」といいます。