鈴木さん 男性36歳中肉中背回数35回期間141日間
以前から疲労感はあったが、慢性化しているため自分でも疲れているのかがよくわからない。疲れているはずなのに寝つきが悪く、眠りも浅い。仕事の上で精神的ストレスを感じたときだけでなく、冷えたときに頻繁に下痢をするが、生活のためには我慢するしかないと半ば諦めていた。テレビの番組で「ストレスによる自律神経の乱れが体を冷やし、それが胃腸の具合を悪くする、改善のためには鍼灸が良い」ということを知る。ホームページで当院を見つけ来院。
- 鈴木さん
- お腹を壊しやすいのですが
- 上田
- いつもですか?
- 鈴木さん
- 冷たいものを飲んだり食べたりしたときや食べ過ぎたとき、それと緊張したときなどです
- 上田
- 最近になってからですか?
- 鈴木さん
- 昔からお腹は壊しやかったのですが、頻繁に壊すようになったのは最近です
- 上田
- 思い当たることは思い当たることはありますか?
- 鈴木さん
- ・・・・疲れが溜まっているのでしょうか?仕事上のストレスもあると思います
- 上田
- 病院には行かれましたか?
- 鈴木さん
- はい。一度行って過敏性腸症候群だと言われました。薬をもらって飲みましたが、あまり効いている気がしませんでした
- 上田
- その後は?
- 鈴木さん
- 病院には行っていません
- 上田
- そうですか。ご自分で疲れていると思いますか?
- 鈴木さん
- 疲れているんでしょうけど、あまりよくわかりません
- 上田
- 眠れていますか?
- 鈴木さん
- 寝つきがよくありません
- 上田
- 夜中に目が覚めることは?
- 鈴木さん
- ときどきあります
- 上田
- 睡眠時間(ベッドに入っている時間)はどれくらいですか?
- 鈴木さん
- 5時間くらいです
その後もカウンセリングを続けました。
- 上田
- 鈴木さんは「土虚木乗」タイプの肝脾不和ですね。中医学的にみると、過敏性腸症候群には、強すぎるストレスによってお腹を壊すタイプ(木乗土)と、元々胃腸が弱いために、ちょっとしたストレスや生活習慣の乱れなどによって起きるタイプとがありますが、鈴木さんは後者(土虚木乗)に当たります
- 鈴木さん
- ふーん
- 上田
- 単に食べ過ぎなどによってお腹を壊すというのであれば、「脾(西洋医学の消化器官に相当する)」に対してのみのお手当でよいのですが、精神的ストレスの影響を強く受けるものの場合、肝の治療も合わせて行う必要があります
- 鈴木さん
- 肝?肝臓ですか?
- 上田
- 肝とはストレスを最初に受け止める臓腑です。西洋医学の肝臓とは違います。肝で処理しきれなかったストレスは他の臓腑に向けられ、それが脾に向いてしまったものが肝脾不和です
- 鈴木さん
- やはりストレスがよくないんですね
- 上田
- はい、精神的ストレスによる疲れは単なる肉体疲労とは違って、何倍も心身に悪い影響を与えます。精神的ストレスによって自律神経が乱れ、交感神経ばかりが強く働き過ぎるようになり、その状態が長く続くと体が冷えてきます。また冷えることで益々交感神経優位となり、それがさらに体を冷やすといった悪循環を生んでしまいます
- 鈴木さん
- ストレスが体を冷やす・・・
- 上田
- 体が冷えることで肝が弱くなり、少しのストレスでも処理することができなくなります。また冷えることで脾のエネルギーも低下してしまいます
- 鈴木さん
- エネルギー低下ですか
- 上田
- はい。エネルギー不足では、いろいろなことに対応できず、病気も治りません
- 鈴木さん
- もっともですね
- 上田
- ストレスのない環境に身を置くことができればいいのすが、なかなかそうもいかないのが現実だと思います
- 鈴木さん
- そうですね
- 上田
- そのような環境の中、過敏性腸症候群を良くしていくのは少し時間が掛かると思います。まずは胃腸を温めて状態を良くする「益脾補陽」と、肝の気の流れをよくする「疏肝理気」を中心に治療をしていきますね
- 鈴木さん
- 少し気長に治していこうと思います
1回目~12回目
週に2回のペースで1ヶ月間通院。下痢の回数が6割程度に減り、だるさも軽減(冷えだけでなく、このときはじめて疲労を抱えていたことを自覚する)。一日の終わりに湯船に浸かるなどのことを実践してもらう。
13回目~24回目
週に1~2回のペースで通院。トイレに行く回数が減り、便の状態も水様のものなどが少なくなる。
25回目~35回目
症状は安定してきている。冷やさないための生活習慣もかなり身に付いてきたように思うとのこと。現状を安定させ、尚且つさらに良好な状態を目指し、月に1回通院。
睡眠不足が続くと交感神経が優位となります。疲れを感じるのは体からSOSのサインが発せられるているということですが、これを無視し続けると自分でも疲れているのかわからなくなります。冷えたときに下痢をする自律神経の不調は、気合や自分の意志ではどうにもなりません。
体質的に胃腸が弱く冷えやストレスによってお腹の具合が悪くなるこの方は、脾の陽虚をベースにして、肝脾不和の状態になっていました。東洋医学の肝は、精神的ストレスに対応する臓腑で、精神的ストレスを肝の力で処理できなかったときに、ストレスは他の臓腑に向けられます。その負のエネルギーが脾(消化器官)に向いてしまったものが肝脾不和。「益脾補陽」により脾の冷えを取り除くと同時に、肝の気の流れをよくする「疏肝理気」が必要なケースです。